ねこさんに多い病気


下部尿路疾患(おしっこの病気)

症状:頻尿、血尿、不適切な場所での排尿、尿が出にくい(出なくなる)

 

原因:特発性膀胱炎、細菌性膀胱炎、結石や血の塊などによる尿路閉塞

 

発病:一年中発病しますが冬場に多い病気です。

 

来院のタイミング:できるだけ早く連れてきてください。特にオス猫さんで尿が出ない場合は早急にご来院ください。時間が経過すると尿毒症になり死亡することもあります。

 

家で気をつけること:特発性膀胱炎や、結石はストレスや飲水量が少ない、そして肥満が関係しているといわれています。

細菌性膀胱炎は、どちらかというと中~高齢のねこさんに多いです。その理由はもともと別の病気がありその影響で細菌感染を起こしやすいためです。

 

その他の尿が出にくくなる病気:膀胱麻痺、がん、その他

 


慢性腎臓病

(猫の診療指針 Part1、PEPPYのwebサイトから参考、引用しています)

慢性腎臓病(CKD)

長期にわたり徐々に腎機能が低下する病気で、低下し始めるとよくなることはありません。10歳以上のネコさんの30-40%がこの病気になっています。また、5歳以上のネコさんでもっとも一般的な死因となっています。

 

原因

ねこさんに腎臓病が多い原因は、はっきりとはわかっていません。

しかし、最近の研究では歯科疾患(中等度、重度)のある猫さんではこの病気になる年齢が早くなるリスクがあることが分かりました。

 

慢性腎臓病の原因として以下のものが報告されています。

糸球体疾患、腎盂腎炎、アミロイドーシス、多発性膿疱腎、腫瘍、高カルシウム血症性腎症、尿路閉塞、腎虚血、腎毒性物質の摂取、感染症、遺伝性、先天性などです。

 

腎臓の主な役割

①尿を作り、量を調整する。 ②老廃物の尿中への排泄 ③ナトリウム、カリウムなどの調節 ④カルシウム、リンの調節 ⑤血圧の調節 ⑥造血ホルモンの産生などです。 

 

体重が5kgのねこさんの血液量は約310~330mlです。腎臓はこの血液から老廃物を濾過しています。濾過された直後の尿(これを原尿といいます)は、1日に約27リットルです。この量は、血液量の約8倍に相当します。

このように腎臓は一時も休まず毎日大量の血液を濾過しています。

原尿はそのまま「オシッコ」として排泄されるわけではありません。

なぜなら、そのまま排泄してしまうとねこさんは簡単にひどい脱水状態になり死亡してしまいます。そのために腎臓内にある尿細管・集合管という場所で原尿から水分を再吸収していきます。この再吸収によって尿は数百倍に濃縮され体の外へ排泄されます。

 

腎臓病の初期症状

オシッコの量が増えます。オシッコの回数が増えます。

これは腎臓で水分を再吸収する能力が低下するためです(薄いオシッコになる)。そのため身体の水分が不足してきますのでお水をよく飲むようになります。これらの症状を「多飲・多尿」といいます。

・最近、トイレ掃除の頻度が増えていませんか?

・夜中にオシッコに行くことが増えていませんか?

・おもらしすることはありませんか?

 

腎臓病の検査

 尿検査・・・比重(尿1ccの重さ)、UPC(尿中にタンパクが出ていないかを調べます。)

 

血液検査・・クレアチニン(Cre)、尿素窒素(BUN)、アルブミン(Alb)、カルシウム(Ca)、リン(IP)、ヘマトクリット値(Ht)、SDMA(CreとSDMAは基準値よりも高くなっていると腎臓機能が低下していることになります)

 

画像検査・・レントゲン検査、エコー検査(腎臓の大きさ、形を調べます。慢性腎臓病になると腎臓が萎縮と言って小さくなってきます。)

 

治療

食事療法が(療法食)が必ず必要になってきます。

慢性腎臓病専用の食事があり、動物病院であつかっています。

リンとタンパク質を制限した食事となっています。

 

ある研究結果によりますと、慢性腎臓病専用の食事を与えたグループと一般食(普通のキャットフード)を与え続けたグループでは、明らかな寿命の差が出ました。なんと2倍近い寿命の差が出たそうです。もちろん慢性腎臓病専用の食事を食べ続けた猫さんのグループが長生きしたそうです。

 

飲み薬・・・ラプロス:腎機能の低下を抑えます。(完全に抑えるわけではなく進行がゆっくりになります)

 

歯周病、歯肉口内炎が慢性腎臓病に影響を与えことが分かっていますので、今現在お口の問題を抱えていないネコさんも含めて、日々のオーラルケアが必要になります。もちろんすでに問題を抱えている猫さんはより踏み込んだ治療が必要になります。

 

慢性腎臓病にはストレスがよくないので快適な生活環境を整えてください。

 

ただし慢性腎臓病は進行性の病気なので、検査(血液検査、尿検査など)によるモニタリングが必要になりますので病院には定期的に通院してください。

慢性腎臓病は進行具合によって治療内容の見直しが迫られます。

 

進行した慢性腎臓病の治療

①脱水の治療・・・点滴(基本的には皮下点滴です。

②貧血の治療・・・造血ホルモン剤の注射と鉄製剤の注射です。

③高血圧の治療・・・降圧剤などの飲み薬を使います。

④タンパク尿(オシッコにタンパク質が混じること)の治療・・・アンギオテンシン変換酵素阻害薬アンギオテンシン受容体拮抗薬という飲み薬を使います。

⑤高リン酸血症の治療(血液中のリンが高いこと)・・食事中のリンと結合して吸収できないようにする飲み薬です。

⑥その他・・・胃炎のお薬、食欲増進剤、便秘の治療など。